黒曜の間より。言葉と映像がひとつに溶ける、没入の一篇。
深夜の廃線、紫煙の中で貴方の赤と私の青が絡む。瞬きの先、ぷつりと閉じた視界——何処にいるの。深夜ラジオのような夜に寄せた一篇。
灼熱の公園のベンチに、貴方はいない。壊れたガラスに映るのは、こんなに寂しい私の目。溶ける月とガラスの心臓、忘却の庭園に寄せた一篇。
指に跳ね返る一本の弦。もう同じ音色は奏でられない。貴方を送る弔詞のように、切れた弦が揺れる——静かな夜に寄せた一篇。
細目から見える先、紅い頬の反射が闇に浮かぶ。青白い狐火に寄せた、銀河の夜の一篇。
カシャと鳴れば、夜のライトアップが瞳に映る。回転する運気の渦、ひらいた大きな穴に私達は吸い込まれて——夜の観覧車を描いた一篇。
真っ黒な月に身を隠し、裏側の太陽までも大海原へ落とした。月と命じて愛したのは、本当は太陽だった——皆既月蝕に寄せた一篇。
皆が夢の世界へ時空を超えて消えたあと、私だけが違う星に取り残されて。光の強さに気づいて、はじめて夜の暗さを知る——深い宇宙の孤独を描いた一篇。
時が止まるように泣いていた。でも貴方はこの土地に居る。少しずつ、この土の上に私が立っていられるように——泣かないように。暁の大地に寄せた一篇。
珍しい話に驚くうち、その先を貴方は語らない。託すようなその目で——そっか、次は私なのね。空の器に注がれる一篇。