黒曜の間より。言葉と映像がひとつに溶ける、没入の一篇。
ふと見上げれば、そこに残る貴方のカケラ。まだ居たのね。刻まれた染みは届かず、すぐ忘れて——けれど、消えない。天井に滲む一篇。
教室の端っこの席で、雑木林に潜む狸のように目立たずにいたい。黒板はたまに、鉛筆を削り、遠くを眺め、机に落書きを——森にまぎれる一篇。
全然違う私達が、何世紀も超えて巡り会えた。これは運命としか言いようがない——けれど言葉にしたら終わってしまう。秘めた想いを綴る一篇。
美しい言葉の奥に滲む、努力の源。一本一本の線に丹田を込めた、こだわり抜いた絵筆——色彩が手を引く一篇。
音の無いピアノ室は、二人だけの隠れ家。会食を抜け出し、そっと体育座りで——静寂に身を寄せる共犯の一篇。
酒のアテ片手に大きく笑い、何も見ずに剣を振り抜く。完璧じゃない、その大ぶりな豪傑——月下の武者に寄せた一篇。
両頬に宝物を詰め、地面を蹴って一心不乱に走る。ビリッけつでもご愛嬌——割れた柘榴とルビーの種に寄せた一篇。
馬に乗り森を駆け抜ける姿。首を提げ、今日は誰の顔だろうと——聴衆が固唾を呑んで見守る一篇。
見上げた天井に吊られた目が泳ぎ、マネキンとポスターが艶めく。すべては虚と知りながら、その艶に触れたくなる——倒錯した虚飾の一篇。