黒曜の間より。言葉と映像がひとつに溶ける、没入の一篇。
見えない事から気になりは生まれる。こちらにはトリュフがありそうだと——分岐の最中に出逢った二人。全てが急だった秋の森の一篇。
長い長い廊下の先に、口調とザワザワした会話。気配は感じるのに、誰も見えない——深夜の廃線にまぎれる一篇。
鬱々しい朝日の中、何も見えないのに、ここは誰にも見えない特別な場所。透明な存在が、気づかれぬまま今すぐ消えてしまいそうで——白む暁に溶ける一篇。
骨が浮き出る屋根の下、貴方と二人きり。澱んだ黒い空から脳天へ滴る雫、変わらぬ微笑みと哀しい顔——奈落へ落ちる黒雨を描いた一篇。
開いた戸の先は言葉の世界。そこに拡がる言葉が貴方のかたちになる。生まれ持った顔貌に囚われなくていい——絵巻に綴じた一篇。
綺麗だと褒めてくれた言葉は、本当は嘘。貴方は私をブローチや髪飾り、通行証や免罪符のように——いえ、玄関に置く牛乳瓶のように見ていた。薔薇に重ねた一篇。
愛に溢れた可愛い走り書き。ずっとその文字を見ていたい。帽子の中に貴方の言葉を詰めて、私も少しずつ、愛ある形で言葉を返したい。絵巻に綴る一篇。
一つだけ選ぶなら——柔らかな芝生で寝転ぶ天国か、斧を提げ一直線に立つ姿か。どちらも私で、選べばもう戻れない。芝の上の葛藤を描いた一篇。
いつもと違う顔。私の話を先まで読んで答えてしまう貴方。夜中ずっと考えた言葉も、会えば相殺されて——貴方ってブラックホールみたい。宇宙に呑まれる一篇。